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ロゴを作る前に知っておきたい”商標制度”の仕組み

ロゴを作る前に知っておきたい”商標制度”の仕組み

LOGOPLUS Mediaでは、商標の専門家である弁理士が、商品やサービスのブランドを守るために必要な「商標登録」「ロゴ作成」に関する知識をご紹介しています。

先日、「ロゴを作る前に知っておきたい“商標制度“の仕組み」という商標についてのセミナーに参加してきました!今回は、その様子をレポートします。

セミナーの内容は大きく、
1.商標の基本について
2.商標を保護するための流れ
3.商標は早い者勝ち、事前調査が必要な理由
4.ロゴデザインと商標登録の関係
5.自社デザインか他社デザインか、使用素材について
6.ロゴは著作権?商標権?どちらで保護するべき
7.知っておきたい商標とロゴの話
といった構成で整理されており、順番にフォーカスしていきます。

1.商標の基本について

(1)商標の機能

まずは、商標とは何か、についての説明からです。
講師の永沼先生によると、商標とは、商品やサービスに付けられる名称やロゴ、ブランド標識などで、商品の「目印・標識」となるものだそうです。この「目印・標識」があることによって、消費者は他の商品と区別することができ、この会社が作った商品だと認識できるようになります。この認識から、品質に問題がないことが分かり、安心して購入できるのです。さらに、商標が付いていることで他の人にもおすすめしやすくなる役割を果たしているそうです。

(2)商標の模倣により起こること

このことをより具体的に理解するために、永沼先生は偽物の「マクドナルド」のマークの例を紹介していました(Mのアーチが1つ多く、謎の表記が加えられたマークです)。

(本物)
本物のロゴ 出典:
Wikipedia「File:McDonald's logo」
※McDonald'sのロゴは、米国マクドナルドインターナショナルプロパティーカンパニーリミテッドの米国及びその他の国における登録商標又は商標です。

マクドナルドのマークに似ているものがあっても、よく見ると何かがおかしいと違和感を持つほど、このマークは世間に浸透しています。
仮にこの偽物のお店に、マクドナルドと間違えて入った人がいるとします。その人がこれまで一度もマクドナルドに行ったことがなければ、そこでのハンバーガーの味が、最初に食べたマクドナルドの味として記憶されてしまうかもしれません。それによってブランドの安全性が脅かされてしまいます。
次に、「adidas(アディダス)」の偽物の「daiads(ダイアス)」の例を挙げられました。

(偽物)
偽物のロゴ 出典:
Flickr「daiads」

一見すると「アディダス」と読めるかもしれませんが、よく見ると違います。このような模倣品は、ブランド側にとっても迷惑ですが、アディダス製品を買えたと思い喜んでいるお客様も残念な気持ちになり、安心感が侵害されてしまうことでしょう。模倣品を取り締まる際には、損害賠償などの経済的な問題が注目されがちですが、永沼先生は、単なる経済的な損失だけでなく、ブランドの信頼性やお客様の安全性を守るためにも、ロゴを保護して守り育てることが重要だと話していました。
そして、これらの問題を解決するためにも、商標権による保護が必要とのことです。

(3)商標権を取得する意味

商標権があることで、侵害者に対して差止請求ができるほか、ライセンス料を通じて正式にロゴを使用するよう要求するができます。さらに、悪意のある使用が行われた場合や、他者が不当な利益を得ている場合には、損害賠償や不当な利益の返還請求を行うことが可能です。ブランドの名誉が傷ついた場合には、信用回復のための措置も講じられます。商標権は強力な独占的な権利であり、商標権を確保することによって模倣品に対する対策や正しい使用を浸透させていくことができる、とのことです。

一方、商標登録をしなかった場合のリスクについてですが、商標登録をしていない状態で使用していた場合、先願主義の原則により他社が先に商標を出願してしまうと、自社が頑張って準備を進めていた商品展開であっても、使用を中止しなければならなかったり、名称やロゴを変更しなければならなかったりすることがあります。

商標権を取得する意味

さらに、ライバル企業に模倣されたり、粗悪な偽物が作られて使用されたりするリスクもあり、信用が落とされてしまうかもしれません。

商標権を取得する意味

商標権が確保できていなければ、これらの問題に対処する根拠や手段を持つことができます。永沼先生は、守りの意味においても商標権の取得はマストであると、商標権の重要性を強調していました。

商標を保護するための流れ

(1)商標権を侵害しないために

次に、商標調査と、商標登録についての話になりました。
商標調査は、自社の商標が他人の商標権を侵害していないかを知るためにとても重要です。使用を始める前に商標調査を行うことで、他人の商標権を侵害してないということも確認できるので一定安心して使用できますが、その後他社に登録されてしまうこともあり得ることもあり、できれば早急に商標登録を受けることが望ましいそうです。

(2)商標を保護するために

商標を保護するための手続きは、大まかに「ロゴの検討→商標調査→出願→審査→拒絶対応→登録→使用→更新」と進みます。

商標登録の流れ

最初にロゴの検討を行い、その後商標調査に入ります。この検討と調査の関係は、企業によって異なる考え方があるようです。一部の企業は、検討段階で複数の候補があるうちは調査を行わず、最終的に1つに絞った後に調査を依頼するケースもあるようです。しかし、おすすめは、複数の候補がある段階で商標調査を開始すること、とのことです。その理由は、時間をかけて最終的に1つに絞ったとしても、それが商標登録できないとなると再度検討のやり直しになり、労力や費用がさらにかかってしまう可能性があるからです。信頼できる調査・専門家がいるのであれば、複数の候補があるうちに相談することをおすすめすると話していました。

商標調査が終わると、次に特許庁に対し商標登録出願を行います。その後、特許庁による審査が行われ、問題がなく一発で登録というパターンと、何らかの理由で登録を認めないという、拒絶理由通知がされるパターンに分かれます。拒絶理由通知がされた場合には、その理由に対応したうえで登録がなされます。
ロゴは、登録前の段階では「™マーク(TMは商標Trademarkの略)」と表記され、登録が完了すると「®マーク(Rは商標登録Registered Trademarkの略)」の表記が可能になります。これにより、商標登録済みであることをアピールすることができます。
そして、ブランドロゴを使用していく中で信頼を築き上げ、更新時期が来たら忘れず更新手続きを行い、更新することで半永久的に保護することができるとのことでした。

(3)審査の所要期間

審査の所要時間ですが、どのくらいかかるのでしょうか?永沼先生が紹介していた、特許庁が公開しているページによれば、令和5年10月時点での審査着手予定が記載されています。

商標登録の審査の所要時間

例えば、食品メーカーが食品の商標登録の出願をした場合、令和5月~7月に出願されたものの審査の着手は、目安として令和5年11月と記載されており、およそ約3〜8ヶ月かかるそうです。過去に比べると、審査には1年以上かかっていた時期もあったようですので、かなり短縮されたと言えるでしょう。
また、早期審査という制度があります。これは、商標登録を急ぐ方々のための制度で、通常の審査に比べて結果が約2ヶ月で得られるというメリットがあります。通常の審査よりも早い結果が欲しい場合や商標登録を急ぐ必要がある場合に有益です。ただし、この制度は手続きや条件がより複雑になるため、しっかりとした準備が必要です。早期審査自体に費用は掛かりません。ただし、通常は複雑な書面の準備が必要となるため、代理人に依頼することをおすすめします。なお、代理人に依頼した場合には費用が発生するはずとのことです。また、誤解されがちですが、早期審査は単に審査期間が短くなるだけで、審査の結果が有利に働くものではありません。良い結果でも悪い結果でも、早く知ることが出来る、というものです。

(4)自己出願か、代理出願か

商標を出願すること自体は個人でも比較的容易ですが、適切な商標調査・適切な範囲での出願・権利化を行うためには難しい判断が必要になり、この部分は専門家のスキルが試されるポイントとのことでしたので、まずは専門家に相談してみると良さそうです。

3.商標は早い者勝ち、事前調査が必要な理由

(1)商標は早い者勝ち

次に、商標登録出願のタイミングに関して、商標の早い者勝ちのルールについて説明します。
商標はできるだけ早く出願することが重要です。商標は先に出願した人が登録を受けられるルールになっているからです。わずか1日の遅れでも、権利を主張する立場から権利を主張される立場に回ってしまうことがあるのです。このようなケースでは、単にロゴデザインの変更に留まらず、経営にも直結する深刻なトラブルを引き起こす可能性があるため、十分に注意が必要です。

(2)同日出願とくじ引き

商標登録は早い者勝ちなのですが例えば同じ日にそっくり、または同じ商標が出願された場合はどうなるでしょう。この早い者勝ちは日単位で考えるので前日に出願していればその方が基本的には有利ですが、同じ日ということになると違うルールがあるそうです。それは「くじ引き」です。厳正なくじの結果で商標権者が決められることとなっているそうです。

永沼先生は代理人としてこのくじ引きを経験したことがあるそうなのですが、その案件ではなぜくじ引きになってしまったかというと、商標について商標登録出願前に影響力のあるテレビでリリースしてしまったことによるそうです。その新しい商標のリリースを見た人が、特許庁に出願を行なってしまい、永沼先生は急遽代理人となるよう依頼され、同じ日に慌てて特許庁に駆け込みの出願を行ったのだそうです。その方に先取りをしようとした意図があったかどうかは定かではありませんが、交渉の際に数十万から数百万の解決金を支払えば商標登録は諦めるという話もあり、金銭目的があったのではないかと推測されるところです。この解決金に対して元の発案者は当然ながら同意しませんでした。
同日出願の場合はまず当事者同士で話し合いをするようにと指令が出されるようです。この話し合いが上手くいかない場合、くじ引きで出願することのできる方を決めるというルールとなっています。くじ引きの流れとしては、まずジャンケンでサイコロを振る順番を決め、ジャンケンに勝った者は2つのサイコロが与えられ、それを振ります。出た目の合計が大きい方が勝者となり、勝者からくじで使う玉の色を決めます。双方決め終わるとガラガラに決めた玉を入れ回すのですが、このガラガラを回すのは特許庁の職員が行うそうです。これまでジャンケンやサイコロ、玉の色選びなど運試しをしてきた中で、最後のガラガラだけは特許庁の職員が担当するというのも面白いですね。このガラガラで出た色の方が商標を出願する権利を得られますが、残念ながら元の発案者は負けてしまったそうです。後日談として、相手方が登録料を支払わなかったために権利は発生せず、最終的には元の発案者の方が無事に登録することができましたが、その過程での長い道のりと費用的な負担は相当なものでした。商標登録は1日でも早く進めるように、そしてロゴ作成時には他の企業と被らないように調査も合わせて行うことをお願したいと永沼先生は仰っていました。

(3)リリース時期

また、リリース時期についても十分気をつけてくださいとのことでした。まだ権利化の準備が進んでいないロゴをリリースしてしまうと、リスクが伴います。売上やお客様の反応を見てから権利化を考えるケースもありますが、思わぬところで先取りしようと計画する方も、残念ながらいます。この先取りに関しては法的に違法ではないので、これだけを理由に相手を責めることは難しいそうです。

4.ロゴデザインと商標登録の関係

(1)商標登録できないもの

ここまで商標登録は急ぐべきだという話でしたが、一方でこんなポイントもあるようです。それは、「何でも商標登録できるわけではない」ということです。では、どのようなものが権利化されないのでしょうか?具体例を挙げて説明されていました。
まず、「特徴のないもの」は商標登録ができません。具体的には、商品の内容をそのまま記述しただけでは、原則的には商標登録が認められません。例としては、「大阪たこ焼き」や「美味しいおせんべい」などは、商品の説明そのままの表記に過ぎないということで商標登録は認められません。
ただし、例外もあります。例として永沼先生は「サッポロビール」を挙げられました。一般的な観点から見ると、地名と飲料の名称なので通常はは登録が認められないのですが、全国的に広く認知されていることが大きなポイントとなり、独自のブランドとして認められた結果、商標登録されたケースです。

(2)ロゴ化するという方法

ただここまで、一般名称を自社のブランドとして有名にさせるというのはかなりハードルが高いですよね。そこで使える方法の1つが「ロゴ化する」という方法です。一般的な名称として登録できないものでも、ロゴをデザインに組み合わせることでデザインの部分に特徴が認められて、登録できることがあるそうです。この場合、文字部分は権利の範囲外となり、文字以外の部分が重要視され、判断されることになります。そのため、文字だけを使用する人は権利を行使することはできませんが、ロゴ化することで登録商標や®を表記することができ、独占権であるという印象を与え、抑止効果を期待することができるそうです。

(3)ほっとレモンから見るロゴ化の事例

次に、永沼先生は「ほっとレモン」を例に挙げられていました。温かい飲み物の名前であり、「ほっと」「レモン」を組み合わせたこの言葉は、普通の感じがしますよね。この言葉は商品の説明をそのまま記述したものとして登録が認められませんでしたが、それをロゴ化した事例の紹介です。

ロゴ化による商標登録の例
出典:
特許情報プラットフォームJ-PlatPat「商願2009-90724/登録5427470」

このロゴは、「ほっと」と「レモン」を2段書きし、枠で囲んだ繊細なデザインが施されていましたが、特許庁の審査によれば、「このレベルではロゴ化の程度が低く、品質を普通に表すという域を脱さない」という結果で登録することができなかったそうです。
では、どう対処したかというと、ほっとレモンの販売元であるカルピスはロゴに「CALPIS」を追加しました。

ロゴ化による商標登録の例
出典:
特許情報プラットフォームJ-PlatPat「商願2013-040708/登録5617018」

カルピスには十分なブランド価値がありましたので、それを用いてロゴのデザインを組み合わせたことにより、この権利を保護することができたそうです。カルピスの商品であることを示すことで、ようやく認められたケースですね。「ほっとレモン」のロゴは繊細なデザインが施されていましたが、この登録が認められなかったのが、特許庁が審査するのはデザインの優劣ではなく、一般の方が見た時の印象だからだそうです。多少なりともインパクトのあるデザインがなければ、それは普通のものと認識されてしまうということで、このような判断に至ったのです。
「ほっとレモン」のロゴが認められた理由は、「ほっとレモン」という言葉やデザインではなく、カルピスのブランドがプラスされたことによるものなので、「ほっとレモン」という言葉そのものは保護されません。この結果、次のような問題が生じる可能性があるそうです。それは、「同じ名前でもロゴが異なれば登録されることがある」ということです。文字の部分に独占権はなく、デザインが異なれば同じような言葉で作成された複数のロゴが同時に登録されることが可能とのことです。これは重要なポイントでもあると思います。

(4)ロゴの商標登録の必要性

永沼先生は、「ロゴは商標登録をするべきか?」という問いに対して、「YES」と答えられました。商標登録しないでビジネスを行うことは、戦場に装備を身につけずに行くことと同じだと考えているそうです。ロゴは、継続的に使用され、広く知られることでその真価を発揮します。会社や商品、サービスのロゴは、社外秘として秘匿されるものではなく、むしろ多くの人に頻繁に目にしてもらう機会があることを企業側も望んでいるのではないでしょうか。その中で必要な装備ということだと思います。

ロゴに認知と信用を蓄積

5.自社デザインか他社デザインか、使用素材について

(1)フリー素材の使用

次に、商標登録を念頭に、利用できるロゴの素材についてのお話がありました。例として、フリー素材を使って会社名と合わせてロゴを作り、自社のものとして独占して使うことができるのではないか、という点が挙げられました。
今回は、フリー素材で有名ないらすとやを使って解説していただきました。
例えば、「2nd Anniversary」といういらすとやで配布されている素材があり、これを元々の会社のロゴに組み込むことで、2周年の記念ロゴを簡単に作成することができ、非常に便利です。

フリー素材の例

しかし、いざこれを商標登録しようと思っても難しい場合があるようです。その理由としては、「利用規約」が存在するからだとか。
いらすとやの利用規約(一部抜粋)によると、「会社のロゴマークやキャラクターや看板として利用できますか?」という問いに対し、「問題ありません。ただし、商標登録などをして独自の権利を主張する事はできません。また他の個人や企業が同じ物を使用するかもしれません。』と回答されています。
このことから、会社の看板やホームページに載せるなど、使用すること自体は問題ない一方で、利用規約には「商標登録などをして独自の権利を主張することはできない」と明確に商標登録が禁じられていることに注意が必要です。また、「他の個人や企業が同じものを使用するかもしれない」という1文については、他のブランドと同じものを使うことで、会社のオリジナル感が失われる可能性があります。看板はオリジナルであることが望ましいですよね。それゆえ、ブランド戦略や商標登録の観点からも、他社の素材を使用する場合は利用規約をしっかり確認してくださいとのことでした。
ちなみに、いらすとやの利用規約には、『書籍・チラシ・パンフレット(中略)など媒体を問わず、1つの制作物につき20点(重複はまとめて1点)まで商用利用をすることができます。』という記載もあり、今回永沼先生の資料は20点以内に収まるよういらすとやの素材を使用したそうです。

(2)フォントの使用

次に、フォントについての説明がありました。
WindowsやAdobe製品に最初からインストールされているフォント、Googleフォント、Microsoftのフォントなどは商標登録が可能です。しかし、有料のフォントなどは規約によって商標登録が厳しく制約されている場合もあります。そのため、文字の使用方法や規約についてはしっかり確認することをおすすめします。

(3)イラストやフォントを使用するときの注意点

他社のイラストやフォントを利用して作ったロゴが使用や登録することができるかは、今まで見てきた通り、規約や契約によって異なります。自社のデザイナーに制作してもらう場合でも、外部のデザイナーに依頼する場合でも、「この作品はオリジナルである」という一筆をもらっておくと、後々トラブルが起こる可能性を減らすことができますので、都度そのように、作品がオリジナルであるかどうかを確認することをおすすめするとのことです。
なお、特許庁の商標審査の段階では、関連する権利や著作権などは見られません。他人の作品などが含まれていても、商標登録自体は行われることがありますが、後々、異議申立てや無効審判、規約違反とされることもあります。場合によっては、作品のファンから非難や批判を受ける可能性もあります。このようなトラブルを回避するためにも、やはりオリジナルのロゴデザインには大きなメリットがあると言えます。

6.ロゴは著作権?商標権?どちらで保護するべき

(1)商標権と著作権

ここまで、使えるイラストや注意が必要なイラストについての話が聞けましたが、ロゴを保護するためには商標権と著作権が必要になるということですので、ここからは商標権と著作権の保護についての話に移ります。
永沼先生は、ロゴは商標権・著作権どちらで保護するべきでしょうか?という質問をよく受けるそうですが、この2つには、絶対的権利と相対的権利の大きな違い、そして保護対象・保護期間・効力などにおいても違いがあります。

(左が著作権表示のCマーク、右が登録商標を表すRマーク)
著作権表示のCマークと登録商標を表すRマーク

著作権はロゴデザインを作成した瞬間に自動的に発生し、特別な手続きは不要とのことです。ただし、その創作物が最終的に著作物として認められるか、本当にこの人のオリジナルの権利なのかを証明するのが大変だそうです。
一方、商標権は商標登録を特許庁に出願し、複数の審査を通過することで絶対的な権利が付与されます。ここは非常に重要なポイントだと永沼先生はおっしゃっていました。

(2)絶対的な権利としての商標権

絶対的な権利とは、他との比較ではなく、特定の範囲内では誰も使用することができない強力な権利のことを指します。商標登録の情報は一般に公開されており、登録があるかどうかを知らなかったとしても、その商標を不正に使用することは商標権の侵害となります。商標権はたまたま似てしまった場合でも成立する絶対的な権利、著作権はたまたま似てしまった場合は2つの権利は併存し侵害にならず、権利者にとって完全な独占は難しい相対的な権利、といえそうです。
普段から特許庁のホームページをチェックすることはあまりないと思いますが、見た、見てないに関わらず、商標登録されていることに関しては注意義務が課されています。ビジネスを始める瞬間から、同じだったり似ていたりするロゴを使用して同業種でビジネスを行うことは禁止という、商標のゲームのルールに強制的に参加させられていると考えることができるとのことでした。

(3)他人の著作物を含む商標

ところで、もしも誰かの作品が商標登録出願されてしまった場合、どういった扱いになるのしょうか?他人の著作物を使用している商標がもし登録されてしまった場合、商標登録が行われても、他人の著作物が含まれているため、その商標は使えないということになるのだそう。事実上のお蔵入りです。したがって、商標出願の際には、特許庁に先に登録されている商標だけをチェックするだけでは不十分であることが指摘されました。ここで永沼先生からのワンポイントアドバイス、「オリジナルデザインの確認」が効いてきます。他人の作品を使用していないことを確認することが重要であるとのことです。せっかく出願して他の商標とのバッティングを避けて登録できたとしても、著作権とのバッティングがあれば、その商標は使用できなくなる可能性があります。時間や費用を費やしてきたことが無駄になるかもしれないので、ロゴ作成時にはくれぐれもご注意くださいとのことでした。

7.知っておきたい商標とロゴの話

(1)Appleのロゴ

最後に、知っておきたい商標とロゴとして、とても有名なロゴを2つ取り上げていました。
1つ目は、Apple製品に印されているリンゴのロゴです。このロゴは、一目でアップルの製品だと分かる知名度がありますよね。リンゴというありふれたものをモチーフに使用しているため、他の企業もリンゴを使う可能性があるかと思いますが、Appleは、リンゴをモチーフにしたロゴを使用している企業に対して、次々と訴訟を行っていると報告されています。今回例として比較した企業のロゴは、洋梨をモチーフにしたもので、従業員が5人の小さな企業によって使われていたものです。

商標とロゴの例
出典:
HUFFPOST「アップル、ナシのロゴを持つ小規模アプリ会社に“法的措置”」

その企業にとっては悪意なく出願したロゴだと思われますが、Appleからの異議申立てや沢山の書面が届いて恐ろしい体験だったと述べているようです。この件でロゴを変更することになったのですが、大きく変更した箇所は葉っぱの形でした。従来のマークの葉っぱはアーモンド型でAppleの葉っぱの形によく似ているというところを、三日月のような形に変更しデザインの類似度が下がり、この程度の類似度なら問題ないでしょう、と争いを回避することができたようです。他の企業では葉っぱの向きを右から左に変えたことでトラブルを回避できたケースもあります。

商標とロゴの例
出典:
9to5Mac「Apple and Prepear reach an agreement on pear-shaped logo trademark」

リンゴを使用する企業に対して次々と訴訟を行っているため、注意が必要ですが、永沼先生はリンゴのデザインを控えましょうと言いたいわけではなく、むしろ、言いがかりに近い異議申立てであれば負けないでほしいとも思うとのこと。しかし、ニュースによると、Appleが異議申立てをした118件のうち76件で有利な判断が下されたとのことで、その勝率の高さが伺えます。しっかり争えば法的に問題はない場合でも、このような大手企業の圧力で変更を余儀なくされるケースもあります。この訴訟は世界中でランダムに行われているため、日本企業だから安全と言えるわけではありませんね。リンゴをモチーフにする場合やこのような事態に巻き込まれた場合、企業としてどのようなスタンスを取るかを事前に社内で検討しておくことも良いでしょうと、永沼先生はおっしゃっていました。

(2)Googleのロゴ

また、あなたは、Googleのマークがパッと思い浮かびますか?
2つ目に取り上げていたのは、Googleのロゴマークです。

このデザインは、赤青黄の三原色を基に作られていますが、この三原色は規則や常識を表しており、そこに緑が加わることで色のルールを破壊する意味を表していると言われています。Googleのカラーには、「我々はルールに縛られない」という思いが込められているそうです。この興味深い話は、当初永沼先生も知らなかったそうですが、ロゴというものはこういったストーリーをも語ります。そして膨大な情報量を提供する検索エンジンであるということは世界中多くの人が知っていると思います。
Google社のロゴを例にしても、先ほどのストーリーよりもやはり印象的なロゴがサービスと強い結びつきを持って、人々の頭や心に残りサービスを利用する時の道標になっているのではないかと永沼先生は考えているようです。

(3)まとめ

ロゴの方が企業理念よりも記憶に残ることが多いですよね。
ロゴを見て、直感的に良い店か悪い店かを判断することもあります。
ただ、一方でロゴの情報を公開することは、このデザインを無防備に他人にさらすことでもあります。そのため、商標権を取得していないと、他社に先を越されて登録されたり、模倣されたり、適切でない使われ方をされたりする可能性が高まります。これによって、ロゴや会社の信頼性が損なわれることもあります。

自社のリスクを回避したい場合、実際どこに相談すれば良いか悩みますが、【LOGO PLUS(ロゴプラス)】というサービスがあり、ロゴデザインと商標のリスクチェックをワンパッケージで提供してくれるとのことです。商標チェックの部分では、永沼先生が関与してくださるようですので、何かあれば相談してみると安心できると思いました。